溺れてから船を呼ぶということから、何かが起こって、あわててその処置に当っても、何にもならないことをいいます。
『三国志』・魏志 董卓(トウタク)傳の注に、『典略』という書に董卓の上表文として次のように書かれています、という記載がありまして、【溺るるに及んで船を呼ぶ】はその上表文の中にでています。
臣聞、揚湯止沸
臣(シン)聞く、湯(ゆ)を揚げて沸(わ)くを止むるは
私が聞きますには、熱湯を扇いで冷まそうとするよりも、
不如滅火去薪。
火を滅し薪(たきぎ)を去るにしかず。
火を消して薪を取り去るほうがよく。
潰癰雖痛
潰癰(カイヨウ)痛しと雖(いへど)も
腫れ物をつぶすのは痛くとも、
勝于養肉。
肉を養ふに勝(まさ)れり。
(患部の)肉をそっとしておくよりまさるとか。
及溺呼船、
溺るるに及んで船を呼ぶは、
溺れてから船を呼び、
侮之無及
之を侮(く)ゆるも及ぶ無しと。
後から悔やんでももう追いつきません。