人の一生は短いもので、70歳まで生きた人は昔からめったにいない。せめて生きている間、酒でも飲んで楽しくやろうじゃないか。
杜甫47歳のとき、長安の南東部にある名勝地、曲江を散策しながら歌った詩中の句です。
杜甫は古希を迎えられず59歳でその生涯を閉じています。
曲江 杜甫
朝囘日日典春衣
朝(チョウ)より回(かへ)りて日日(ヒビ)春衣(シユンイ)を典(テン)し、
毎日毎日春の衣服を質屋に入れ、
毎日江頭盡醉歸
毎日 江頭(コウトウ)に酔(よ)ひを尽くして帰る。
曲江のほとりで酒を飲み、酔ってから帰る。
酒債尋常行處有
酒債(シュサイ)は尋常、行(ゆ)く処(ところ)に有り。
酒の借金はほうぼうにあるが、かまうものか。
人生七十古來稀
人生七十 古来稀なり。
七十歳まで生きた者はめったにない。
穿花蛺蝶深深見
花を穿(うが)つの蛺蝶(キョウチョウ)は深深(シンシン)として見え、
花の蜜を吸うアゲハチョウは、奥深くに見え、
點水蜻蜓款款飛
水に点ずる蜻蜓(セイテイ)は款款(カンカン)として飛ぶ。
水面に尾を触れながら、トンボはゆるやかに飛ぶ。
傳語風光共流轉
伝語(デンゴ)す 風光、共に流転(ルテン)して、
風光に伝えよう、私と一緒に流れていこう
暫時相賞莫相違
暫時(ザンジ) 相(あい)賞して 相(あい)違(たが)ふこと莫(なか)れ、と。
しばらくの間お互いに賞して、互いにそむくことのなように。