人に恩を施しても、その恩返しを受けようなどと考えてはいけない、と言う意味です。
後漢の崔瑗(サイエン:78年~143年)の『座右銘』という二十句百字から成る文章の始めの四句二十字を示しました。
無道人之短、
人の短を道(い)ふこと無かれ、
人の短所を言うんじゃない、
無說己之長。
己(おのれ)の長を說(と)くこと無かれ。
自分の長所を得意になって言うもんじゃない。
施人愼勿念、
人に施しては慎みて念ふ勿れ、
人に恩を施しても、その恩返しを受けようなどと考えてはいけない、
受施慎勿忘。
施しを受けては慎みて忘るる勿れ。
(しかし、自分が)恩を受けたなら、いつまでも忘れないでいること。
崔瑗は、後漢時代の政治家・文人です。
崔瑗の兄であった崔璋が人に殺され、崔瑗は自らの手で仇を殺しました。逮捕を避けるため故郷を離れ、流浪の生活を余儀なくされました。
数年後、大赦により崔瑗は郷里に帰ることができました。
彼は自分の犯した罪を悔い、自らを戒める一篇の銘文を書いて、常に自らの傍らに置きました。
これが、「座右の銘」です。
唐代の詩人・白楽天は、この『座右銘』に感動して、壁に掲げて いくつかを実行していたそうです。