①天地がまだ分かれないようす、②ぼんやりして形がはっきりしないようす、③ぼんやりとして、何も知らないさま、などの意味があります。
『荘子』応帝王篇に、【渾沌】が初出されています。荘子が言いたかったことは、
いままで、何の問題もない状態に、かってに良かれと判断して、手を加えて破壊してしまうこと。だろうと思います。
南海之帝為儵、北海之帝為忽、中央之帝為渾沌。
南海の帝を儵(シュク)と為(な)し、北海の帝を忽(コツ)と為し、
中央の帝を渾沌(コントン)と為す。
南海の帝を儵と言い、北海の帝を忽と言い、中央の帝を渾沌と言いました。
儵與忽、時相與遇於渾沌之地。
儵と忽と、時に相い与(とも)に渾沌の地に遇(あ)ふ。
儵と忽とが、ある時渾沌の地で出会いました。
渾沌待之甚善。
渾沌之を待(ジ)すること甚(はなは)だ善(よ)し。
渾沌は両者を大変厚くもてなしました。
儵與忽諜報渾沌之徳曰、
儵と忽と渾沌の徳に報(むく)いんことを諜(はか)りて曰く、
儵と忽は渾沌の恩義に報いようと相談して言いました。
人皆有七竅、以視聴食息。
人皆七竅(シチキョウ)有りて、以て視聴食息(シチョウショクソク)す。
人は皆7つの穴(目2つ、鼻2つ、耳2つ、口1つ)が備わっていて、
それで、見たり、聞いたり、食べたり、呼吸をしている。
此獨無有。
此(こ)れ独り有ること無し。
(しかし)渾沌にはそれがない。
嘗試鑿之。」
嘗試(こころ)みに之を鑿(うが)たん。と。
ためしにこれ(穴)を開けてあげようではないか。
日鑿一竅、七日而渾沌死。
日に一竅(イッキョウ)を鑿ち、七日にして渾沌死す
1日に1つ穴を開け、7日たつと渾沌は死んでしまいました。