去ってゆく者は無理に引き留めない。
意見が合わない人を無理に引き留めたりはしない、相手の思うに任せる、と言う意味です。
出典は『孟子』盡心章句下です。
孟子は滕(トウ)の文公に招かれて、その離宮に泊まりました。
たまたまその窓の上に、造りかけのわら靴が置いてあったのが、いつのまにか紛失して
見つからなかった。
ある人が孟子に尋ねました、
あなたの従者はこんなことをするのですか。くつを盗んで隠すなんて。
孟子がこたえました、あなたは、私どもがここにくつを盗みに来たとでも思っているのか。
とんでもないことだ。
夫予之設科也、
夫(そ)れ予(われ)の科を設(もう)くるや、
私が教科を立てて弟子を取るにおいては、
去者不追、來者不距、
去る者は追わず、来たる者は拒(こば)まず。
『去(さ)る者は追わず、来る者は距(こば)まず』の姿勢でやっている。
苟以是心至、斯受之而已矣。
苟も是の心(学問の心)を以て至らば、斯ち之を受くるのみ。
かりにも聖人の道を学びたいという心でやってくる以上は、
誰でもそのまま受け入れて教えているのです。
(だから、そんな不心得な者は絶対にないとは言えませんが、よもやありますまい。)