広い世間を知らないで、自分だけの狭い見識にとらわれていることを表す言葉です。
『荘子』秋水篇にでている故事です。
井蛙不可以語於海者、
井蛙(セイア)は以て海を語るべからずとは、
井戸の中にいる蛙に海のことを話してもむだなのは、
拘於虛也。
虚(キョ)に拘(とら)わるればなり。
その蛙がせまい自分の住みかにとらわれているからだ。
ある古井戸に一匹の蛙が住んでいました。 蛙が井戸のそばで遊んでいると、
一匹の海亀に出会いました。
蛙は得意げに、井戸の生活の楽しさを海亀に言いました。
とにかく楽しいから、君も来たまえ。
海亀が入ろうとしましたが、足がつかえて入れません。
海亀は、ためらって後ずさりすると、海について蛙に語りました。
海はどこまでも広くて、どこまでも深い。
大雨が降りつづいたけど、海の水はほとんど増えなかった。
ひでりが続いたけど、海の水はちっとも減らなかった。
海に住むのはほんとに楽しいよ。
それを聞いて蛙はびっくりして、すっかりうろたえて意識を失ってしまいましたとさ。
現存『荘子』は内篇7篇、外篇15篇、雑篇11篇に分かれていまして、作者と言われている荘周が書いたのは内篇だけで、他は後世の作であろうと言われています。
後世の作であっても【井の中の蛙、大海を知らず】の慣用句は、昔から膾炙されています。