春の蘭と秋の菊のことで、それぞれ咲く時期は違ってもどちらも美しいということを表す四字熟語です。
転じて、いずれも素晴らしく、優劣付けがたいことの譬(たと)えに用いられます。
出典は『楚辞』禮魂(レイコン)です。
「禮魂」は、楚の国のために犠牲となった戦士を悼む、九種類(実際には11種類)の歌を集めた「九歌(キュウカ)」の中にでています。魂を送り返す最終の儀式を詠ったものです。
宗教的、民俗的な色合いが濃く、短いものですが、古来難解な詩といわれています。
禮(レイ)を 成して 鼓(つづみ)を 會(カイ)し、
儀礼を行い、太鼓を打って、
芭(ハ:花)を 傳(つた)へて 代はるがはる 舞ふ。
香草を手渡して 代わる代わる舞う。
姱女(コジョ:巫女、みこ) 倡(うた)ひて 容與(ヨウヨ:ゆったりとしているさま )たり。
みめよき巫女は歌をうたって、のどかに遊ぶ。
春蘭と 秋菊と、
春の蘭と秋の菊、
長く 絶ゆること 無く 終古(シュウコ:永久)ならん。
(祭りは)長く、絶えることなく、永久に続くであろう。
10月13日~10月17日は、七十二侯の五十侯目『菊花開く』で、菊の花が咲き始めるころとなっています。菊は奈良時代に中国から薬草として伝わってきたそうです。
日本に「菊」はなかったので、「キク」という言葉はありませんでした。ですから音読みがそのまま日本語化して「キク」といわれるようになりました。「菊」に訓読みはありません。
菊の花の咲く頃に空が晴れ渡ることを「菊晴れ」といいます。
立春の頃の『春風氷を解く』を第一侯(2月4日~2月8日))として今日が五十侯目ということです。