人間は生まれながらに貴い者はいない。一所懸命努力して知識を身につけ、人格をみがくのである。どんなにお金持ちでも欲深ければ貧しい人であり、貧乏でも心が満ち足りていれば、豊かな人である。
童子教(ドウジキョウ)は、鎌倉時代から明治の中頃まで使われた日本の初等教育用の教訓書です。
成立は鎌倉中期以前とされています。著者は不明。
7歳から15歳向けに書かれたもので、子供が身に付けるべき基本的な素養や、仏教的、儒教的な教えが盛り込まれている。江戸時代には寺子屋の教科書としてよく使われた。
生而無貴者。習修成智徳。
生れながらにして貴(たっと)き者無し。習い修めて智徳(チトク)を成す。
人は生れながらにして貴(たっと)い者はいない。
努力して修養し、知識を身につけるのである。
貴者必不冨。冨者必不貴。
貴き者は必ず富(と)まず。富む者は必ず貴からず。
貴き者は必ずしも裕福ではない。富む者は必ずしも貴からず。
雖冨心多欲、是名爲貧人。
富むと雖(いえど)も心に欲多ければ、是れ名づけて貧人(ヒンジン)と為す。
どんなに裕福でも欲望が多ければ、心貧しき人なのだ。
雖貧心欲足、是名爲福人。
貧しと雖も心足らんと欲すれば、是れ名づけて福人(フクジン)と為す。
たとえ貧乏でも心が満ち足りていれば、豊かな人である。