人の一生はきわめて短かく、夢幻のようにはかないことを言ってます。
戦国時代、織田信長が愛唱した幸若舞『敦盛』の一節です。
信長は桶狭間の戦いに出陣する際に、これを謡って士気を鼓舞しましたが、本能寺で明智光秀に襲われた時にもこれを謡い四十九年の生涯を閉じました。
思へばこの世は常の住み家にあらず
思えばこの世は常ならず
草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし
草葉に置ける水滴は、水面の月より果敢なくて
金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる
金谷園(キンコクエン)も風に散り
南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれり
南楼の月弄び 月に先立ち雲隠れ
人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
人間五十年 下天の内を比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
ひとたび生まれて 滅びぬもののあるべきか
これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第
これ悟りの境地なり 口惜しかれども仕方なし。