広く世間の人の口にのぼり、知れ渡ることを表す四字熟語です。
一般に【人口に膾炙する】として使われています。広辞苑の説明は『広く人々の口の端にのぼってもてはやされること』となってました。
【膾炙人口】ともいわれます。
【膾】は、「月(肉)+會」からできた形声文字です。
A.D.100年、後漢の許愼(キョシン)による『説文解字』には「細かく切りたる肉なり」とありまして、
「なます」のことをいいます。魚肉のときは【鱠】といいます。
【炙】は、「肉+火」からできた形声文字です。【炙】の字の斜めの月は肉の字が変形したものです。
肉をあぶり、焼く意味を表します。特に串焼きを意味するようです。丸焼きを表す字は「炮」。
『孟子』尽心(ジンシン)章句下に、【膾炙】についての話が出ています。
春秋時代、親孝行で有名であった曾参(ソウシン:孔子の弟子。B.C.505~B.C.436?)は父が死んでから、
父が生前好きであった「羊棗(ヨウソウ:なつめの一種)」を食べませんでした。
(150年ほど後の)ある日、公孫丑(コウソンチュウ:孟子の弟子)はこの件に関して
孟子(モウシ:B.C.372~B.C.289)に質問しました。
「膾炙と羊棗のどちらがおいしいですか」
孟子が言いました。
「膾炙のほうがおいしい」
公孫丑が言いました
「だとすると、曾参の親子も膾炙が好きだったはずですよね。しかし、曾参は父が死んでから、
羊棗だけ食べずに、膾炙は食べたのですか」
孟子は
「膾炙はみんなが好きな食べ物であり、羊棗は曾参の父が特別に好きだった食べ物である。
父が死んでから曾参は膾炙は食べても、父を思いだしてしまうので羊棗は食べなかった。」
と答えました。
最近、【人口に膾炙】する言葉はどんなのが、あるんでしょうか。