大将を射とめようとすれば、まず、乗っている馬を射るのがよいという意味です。
相手を倒すには、その拠り所としているものを奪えという譬えです。
出典は、杜甫の五言律詩『前出塞:ゼンシュッサイ』九首のうちの六首目です。六首目の詩が一番有名です。
杜甫の詩では【人を射るには先づ馬を射よ】となっています。戦い方の極意として、諺のように用いられています。
挽弓當挽強
弓を挽(ひ)かば當(まさ)に強きを挽く
弓を引こうとすれば強い弓を引け、
用箭當用長
箭を用ゐば當に長きを用ゐる、
矢を射ようとすれば長い矢を射よ、
射人先射馬
人を射るには先づ馬を射よ
人を射ようとすればまず馬を射よ、
敵賊先擒王
敵を擒(とりこ)にせば先づ王を擒にせよ
敵を擒にしようとすればまず王を擒にせよ
殺人亦有限
人を殺すも亦(ま)た限り有り
人を殺すにも限りがある、
列國自有疆
國を列(た)つるも自(おのづか)ら疆(さかい)有り
国を立てるには国境というものがある、
苟能制侵陵
苟(いやし)くも能(よ)く侵陵(シンリョウ)を制せば
いやしくも敵の侵略を防げれば、
豈在多殺傷
豈(あ)に殺傷(サッショウ)多きに在(あ)らんや
多くの殺傷をするには及ばない
杜甫が752年ころ西北の辺境に出征する兵士の気持ちを詠んだ詩です。