【脣(くちびる)亡(ほろ)ぶれば歯(は)寒(さむ)し】と訓読みされます。
密接な関係にあるものの一方が滅びると片方も危うくなるということを表す四字熟語です。
「くちびる」を表す字は【脣】が正字です。
常用漢字の【唇】は「辰:ハマグリが足を出して動いている形」+「口:祝詞を入れる容れ物」から出来た字で、占いをする意味を表す字として作られたのですが、「音」の類似性から「くちびる」に使われるようになりました。
辞典によっては「唇」は「脣」の俗字と説明しているものもあります。
【脣亡歯寒】は『春秋左氏伝』の僖公(キコウ)五年:B.C.655のところと、哀公(アイコウ)八年:B.C.487のところに出ています。
僖公五年のところは、晉(シン)という国が虢(カク:脣に相当)と虞(グ:歯に相当)の両国を滅ぼす話しとして【脣亡歯寒】と同義の【唇歯輔車:シンシホシャ】が使われています。
詳しくは『今日の四字熟語』の【No.207 唇歯輔車】を参照してください。
哀公八年のところでは、呉という国が、魯(ロ:脣に相当)を攻め滅ぼそうと企む場面で【脣亡歯寒】が使われています。
呉王は子泄(シセツ)にたずねたので、子泄は答えました。
夫(そ)れ魯は、齊・晉の脣なり。
そもそも魯という国は、齊と晋の「くちびる」に当ります。
脣亡ぶれば歯寒しとは、
「くちびる」がなくなると「歯」が寒い、ということは
君の知る所なり。
王様のご存知のことでしょう。
救はずして何をか為さん、と
(歯に相当する齊・晉 両国は)魯を助けずにはおかないでしょう、と。