【武を偃(ふ)せて文を修(おさ)む】と訓読みされます。
戦いをやめて、学問・学芸を修めること、世の中が穏やかで平和になることを示す四字熟語です。
【偃武:エンブ】は、武器の使用をやめることです。
【修文:シュウブン】は、学問を修めることを表します。
出典は『書経』武成篇です。
周の武王(ブオウ)が、殷の紂王(チュウオウ)を滅ぼして天下を平定した時(一説にB.C.1027年)の状況を記載したところに【偃武修文】がでています。
厥(そ)の四月 哉生命(サイセイメイ:三日目)、王 商より來(きた)り、豐(ホウ)に至る。
その四月の三日目に、王は商から帰って、旧都の豐に着いた。
乃(すなは)ち武を偃(ふ)せ文を修め、
そこで武器はしまって文徳をしき、
馬を華山の陽(みなみ)に歸(かへ)し、
馬を崋山の南におくり
牛を桃林(トウリン)の野(ヤ)に放(はな)ち、
牛を桃林の野に放って
天下に服(フク)せざるを示す。
天下にもう用はない(戦争は終わった)ことを示した。
【偃】は「人+匽」からできた形声文字です。「匽」は「匚+日(玉)+女」で構成されている字で、
人目に触れぬ場所(匚)で「玉」を携え神と交信する儀式で巫女が伏せている状態を示した字です。
そこから【偃】に①ふす。たおれる。②かくれる。かくす。③とめる。やめる。の意味が生まれました。
日本では、戦が終わったという意味で、【偃武】を使った言葉があります。
慶長20年(1615年)5月の大坂夏の陣において江戸幕府が大坂城を攻め滅ぼしたことにより、
応仁の乱(1467年~1477年)以来150年近くにわたって断続的に続いた軍事衝突が終了した事を指すため、江戸幕府は同年7月に元号を『元和:ゲンナ』と改めて、天下の平定が完了した事を内外に宣言しました。
これを【元和偃武:ゲンナエンブ】といいます。
こんな時ですが、40年前の今日9月29日は、日中国交正常化の日 です。
昭和47(1972)年、日本と中華人民共和国との間の国交正常化共同声明(日中共同声明)の調印式が北京で行われ、田中角栄、周恩来両首相が署名しました。