うまく相手を利用して、共に利益を得ることを表した故事成語です。
『韓非子』説林(ゼイリン)上にでています。
鴟夷子皮 (シイシヒ:范蠡ハンレイ) は田成子(デンセイシ)に仕えていた。田成子は斉国を逃亡して
燕国へ行こうとした。鴟夷子皮は通行手形を携帯してお供をした。
望の町までやって来たとき、鴟夷子皮がいった。
子獨不聞涸澤之蛇乎
子、獨(そ)れ涸澤の蛇を聞かざるか。
あなたは、涸沢の蛇の話を聞いたことはありませんか。
沢の水が涸れて、蛇たちが引っ越そうとしていた時、 小さな蛇が大きな蛇たちに言いました。
あなたが進んで私がついて行けば、人間はただの蛇の行列だと思って、あなた方の誰かが
殺されてしまうでしょう。
ところが、お互いに口でシッポをくわえあって、そのうえに私を乗せていくと、人間は私を神様だと
思うでしょう。
そこでたがいにくわえあって小さな蛇を乗せて広い道を横切ると、
人間はみな "神様だ" とおどろいて道を開けたそうです。
いま、あなたはたいそうご立派です。わたしの身なりはみすぼらしいのですが、
あなたをわたしの上客ということにすれば、わたしは小国の殿様くらいにはみられます。
あなたをわたしの使い走りということにすれば、わたしは大国の殿様くらいにはみられます。
この場は わたしの使い走りをよそおうのが最上でございましょう。
田成子は最もだと思い、通行手形をたずさえ鴟夷子皮のお伴をしました。
宿場の宿に着くと、宿の主人がとても丁重にもてなして、酒や肉を献上した。