【安堵】は、物事がうまく行って安心することです。【安堵】は、堵(ト:かき)に安(やす)んず、と訓読されまして、本来の意味は、垣根の中に安住する、です。出典は、『史記』田單(デンタン)列伝の一節です。
田単(デンタン)は、中国・戦国時代の斉の武将です。燕の将軍楽毅(ガッキ)によって滅亡寸前に追い詰められた斉を、「反間の計」で失脚させ,「火牛の計」を用いて燕軍を破りました。
田單又收民金得千溢、
田単(デンタン)、又、民の金を収(おさ)めて千溢(センイツ)を得、
田単は、また民から金を徴収して、千溢(センイツ:金貨の目方)を集め、
令即墨富豪遺燕將曰、
即墨(ソクボク:地名)の富豪(フゴウ)をして燕(エン)の将に遺(おく)らしめて曰(いわ)く、
即墨の富豪を通じて、燕の将軍たちに送り、言わせた
即墨即降、
即墨即(も)し降(くだ)らば、
即墨がもし降参したら、
願無虜掠吾族家妻妾、令安堵。
願わくは吾が族家(ゾクカ)、妻妾(サイショウ)を虜掠(リョリャク)する無く、
安堵(アンド)せしめよ、と。
どうか、私たちの一族・妻妾を捕虜にしたり、掠奪したりなさらず、
安らかに居住させてください。
燕將大喜許之。燕軍由此益懈。
燕の将、大いに喜び、これを許す。燕の軍、此(これ)により益々怠(おこた)る。
燕の将軍たちは大いに喜んでこれを承諾した。燕軍はこのためにますます油断した。