善いことをしてもあまり世間に知られないが、悪いことや悪い評判は、すぐ世間に知れ渡ってしまうということです。

出典は『北夢瑣言：ホクムサゲン／ホクボウサゲン』です。北宋の『孫光憲：ソンコウケン』による逸話集です。全２０巻あります。孫光憲は夢沢（ムタク）の北に住んでいたので『北夢』といいました。
「夢」を「ム」と読むのは呉音読み、「ボウ」と読むのは漢音読みです。

　　五代、後晋の宰相となった和凝（カギョウ）は、若いころ好んで色っぽい小唄を作っていました。
　　それが結構流行してました。

　　宰相になってから、彼は人に命じて作品を焼き捨てさせましたが、評判は消えることなく、
　　遠く契丹の人にまで名が知れ渡り、『艶歌宰相』と呼ばれました。

　　所謂【好事不出門、悪事行千里】士君子得不戒之乎
　　いわゆる【好事は門を出でず、悪事は千里を行く】。士君子（諸君）、之を戒めざるを得んや。

『五代』と言いますのは、唐末に興った五つの王朝を指します。
後梁（コウリョウ：907～923）、後唐（コウトウ：923～936）、後晋（コウシン：936～946）、
後漢（コウカン：947～950）、後周（コウシュウ：951～960）をいいます。