世界中の人々は皆兄弟のように仲良くすべきだと言う意味です。「四海」は世界中ということ。「兄弟」は漢音で「ケイテイ」、呉音読みで「キョウダイ」と読みます。
『論語』に「四海の内、皆兄弟為(た)り」として出ています。孔子のお弟子さんの司馬牛(シバギュウ)には、主人を殺しまた孔子をも殺害しようとした兄がいました。あちこち逃げまわっていまは魯に来ています。『論語・顔淵第十二』に司馬牛の嘆きを子夏が励ます場面が記載されています。【読み下し文】と【口語訳】を、『論語・全訳注:加地伸行』から記載してみました。【口語訳】には理解が容易になるよう一部小生が補説を加えてます
【読み下し文】
司馬牛、憂れえて曰わく、人皆兄弟有り、我独(ひと)り亡(な)し、と。子夏曰く、商之を聞けり。死生は命有り、富貴は天に在り、と。君子敬して失うこと無く、人と恭(うやうや)しくして礼有らば、四海の内、皆兄弟為り。君子何ぞ兄弟無きを患(うれ)えん、と。
【口語訳】
(兄の桓魋(カンタイ)が無法者で、皆に迷惑をかけていることから)司馬牛は落ち込んで言った。「世の中の人には、みな兄弟がいるのに、私には居ない(も同然)」と。子夏がこう慰めた。「私(読み下し文の商は子夏の本名)はこう学んだ。死ぬも生きるも(すべて)運命があり、(同じく)財産も地位も天命のままだ、と。教養人たる者、自重して失礼がなく、他者に対しては謙遜して礼儀を重んじているならば、世の中の人がみな自分の兄弟のようなものになる。実の兄弟がないからといって、どうして落ち込むのだ(あなたの兄さんのことは、しかたがない)」。
兄弟子株の子夏は、司馬牛の兄桓魋がたとえ殺され、或は桓魋の悪事がもとで、司馬牛の上に災難が降りかかることがあろうとも、その運命に甘んじなければいけない、と暗黙のうちに諭したのでしょう。
「今年の漢字」は「絆」に決まりました。496,997票の応募の中で、「絆」が61,453票(12.36%)を集めて1位になったそうです。2位「災」、3位「震」と震災関係が上位を占めました。 「絆」があったので生きてこれたとの理由もあったそうです。
因みに「絆」は人名用漢字ではありますが、漢検1級配当漢字です。難しい字だったんですね。