【過(あやまち)を改むるに吝(やぶさ)かならず】と訓読みします。
自分の過ちを改めることに憚(はばか)ることはありません。と言う意味を表す四字熟語です。
【改】は、「巳+攴(攵)」から出来た会意文字です。「巳」は蛇の形をして、人に呪いをかけて
災いを及ぼす虫です。それを打ち払って他に移す、すなわち「あらためる」となります。
攴(攵)は道具を手にもって「打つ」の意味があります。ですから攴(攵)の付いている字は
「打つ」という基本的な意味があります。攻・放・政・教・敗・・・などがそうです。
【過】は、特定の場所を通過するために禍(わざわい)を祓(はら)う儀式を意味する字として
作られ、「すぎる」、「すごす」の意味となりました。禍(わざわい)を祓(はら)う儀式の
関連で「あやまち」という意味も加わりました。
【不】は、六書:リクショ(象形:ショウケイ、指事:シジ、会意:カイイ、形声:ケイセイ、
転注:テンチュウ、仮借:カシャ)という漢字の作り方、使い方のうち「仮借」という用法の字で、
「~ず」という否定・打ち消しの意味を表します。【No.299 不俱戴天】、【No.296 傲岸不遜】に
もう少し詳しい「不」の字源説明があります。
【吝】は「文+口」から出来た会意文字です。「文」は人の胸にいれずみを書き加えた字として
作られました。ふみ・あや・かざりの意味があります。「口」は祝詞を入れる容れ物です。
凶事(キョウジ)のときの儀礼に関する字として作られました。おしむ・やぶさかの意味があります。
【改過不吝】は、『書経』仲虺之誥(チュウキのコウ)に出ています。
人を用ふるは惟(こ)れ己のごとくにし、
他人のすぐれた意見を取り入れることは、あたかも自分の意見のようにし
過(あやまち)を改むるに吝(やぶさ)かならず
自分の過ちを改めることに、憚(はばか)ることはありません。
「過(あやま)ち」に関しまして、論語にいくつか参考になる文章があります。
孔子の(多分)本音も、書いてみました。
1) 過ちて改めざる、是(これ)を過ちと謂う。 「衛靈公:エイレイコウ篇」
過ちに気が付いても、改めようとしないのが、本当の「過ち」。 性質(たち)が悪い。
2) 過ちては則ち改むるに憚(はばか)ること勿(な)かれ。 「子罕:シカン篇」
過ちに気が付いたらサッサと、改めるように心がけること。 結構難しいんだよな。
3) 小人(ショウジン)の過(あやまち)は、必ず文(かざ)る。 「子張:シチョウ篇」
小賢(こざか)しい奴は過ちを犯すと必ず誤魔化そうとして、余計な言い訳をする。困ったもんだ。
4) 過ちを貮(ふたた)びせず。 「雍也:ヨウヤ篇」
同じ過ちをけっして繰り返さない。 顔回(ガンカイ:最高の弟子)は出来た。