和製四字熟語です。『広辞苑』によりますと、
① 明治前期、代言人(今の弁護士の前身にあたる職業の人)の資格がなくて他人の訴訟や
談判を引き受けた者。また弁護士の蔑称(ベッショウ)。
② 転じて、詭弁(キベン)を弄(ロウ)すること。また、その人。人をののしって言った言葉でもありま
す。
【三百】は、「三百文」の略で、わずかな金額のこと。価値の低いことをいいます。
価値の低い代言人のことを、そしって言うときにも使われました。
【代言】は、【代言人】の略で、明治時代に入って規定された職業の名称です。現在の弁護士の
前身にあたるものです。
明治になって日本に近代司法制度が導入された際に規定され、現在の弁護士の前身。
当初は代言人の条件や社会的立場、活動範囲等が、現在の弁護士とは違っていました。
明治に生まれて明治に滅(ほろ)び、四字熟語の中でしか生きられなかった、「代言人」は
明治5年9月5日「司法職務定制」(太政官布告:だじょうかんふこく)制定
明治9年2月に「代言人規則」によって試験制度が導入。
代言人が法廷で活動できる範囲は民事訴訟のみ。
明治13年に刑法と治罪法(現在の「刑事訴訟法」)が公布。
刑事裁判で弁護活動ができるようになりました。
明治26年「弁護士法」制定。「代言人規則」が廃止され、以降「弁護士」という名称に。
ほぼ20年間の寿命のようでした。
現在の弁護士については、昭和24年に制定された「弁護士法」(昭和24年6月10日法律第205号)が適用されています。
坂口安吾(明治39年10月20日~昭和30年2月17日)の小説『明治開化 安吾捕物帖』に
『長女伸子とその亭主の三百代言角造。次女の京子とその亭主の三百代言能文。
娘どものムコはみんな三百代言だ。三百代言に育てるために学資をだしてやったのだそうな。
コヤツらは棺桶のフチからまだ足のはなれたガサツ者でタノシミがない悪タレどもだ』と
【三百代言】散々に使われています。
『今日の四字熟語』も本日で300語となりました。
【三百代言】などと言われないよう、古典の研覈(ケンカク)を深め分かりやすい解説に邁進します。
・・・・・・まっ、一杯やるか。