真心のこもった言葉は耳に聞きづらいけれども事を行ううえには利益があり、強い薬は口には苦いけれども病気を治すのには効果がある、という意味です。『史記』留侯世家から。
沛公(ハイコウ。劉邦:リュウホウ)が秦の宮殿に項羽(コウウ)より先に入ったとき、その
素晴らしさに心を奪われ、ここに留まって居たいと思いました。
樊噲(ハンカイ)が、沛公に宮殿を出るように諫(いさ)めたのですが聽きいれません。
そこで張良が言いました。
今始入秦、即安其樂、
今始めて秦に入り、即(すなわ)ち其の樂(ラク)に安(やす)んずるは、
やっと秦に入ったばかりで、すぐさま快楽に安住するのは、
此所謂『助桀為虐』。安住する
此れ所謂(いわゆる)『桀を助けて虐(ギャク)を為(な)すなり』、
世間でいう、桀王の暴虐行為を手伝うようなものです。
且、忠言逆耳利於行、毒藥苦口利於病、
且(か)つ、忠言は耳に逆(さから)うも行(おこない)に利あり、
毒藥は口に苦(にが)けれども病(やまい)に利あり、
それに、忠告は耳に痛いが行動に役立ち、
薬は口に苦いが病気には効く、とか申します。
願沛公聽樊噲言。
願くは沛公 樊噲の言(ゲン)を聽け、と。
どうか沛公樣、樊噲のいうことをお聞き入れください。
沛公乃還軍霸上。
沛公 乃(すなわ)ち還(かえ)りて霸上(ハジョウ)に軍す。
そこで沛公はやっと霸上に軍を引き返しました。