人の短所は追及するな、自分の長所を自慢するな。という意味です。
後漢の学者、崔瑗(サイ・エン。字は子玉。78~143)の『座右銘』の第1句目、2句目です。
唐代の詩人・白楽天は、この『座右銘』に感動して『続座右銘序』を作り、
崔子玉の座右銘は、余窃(ひそ)かに之を慕う。
未だ尽(ことごと)くは行うこと能(あた)わずと雖ども、
常に屋壁に書す。
と言っていました。私も真似をしてこの『座右銘』をコピーして壁に貼ってます。見たり見なかったりですが。
チョット長い文章ですが、全文を掲載しました。
1句、2句。 3句、4句。 ・・・・・・ 19句、20句。と対句になっています。
座右銘 崔 瑗
1)無道人之短 人の短を道(い)ふこと無なかれ、
人の短所は追及するな、
2)無説己之長 己の長を説くこと無かれ。
自分の長所は自慢するな。
3)施人愼勿念 人に施しては愼みて念(おも)ふこと勿かれ、
人に恩を施したら早く忘れろ、
4)受施愼勿忘 施しを受けては愼みて忘るること勿かれ。
人から恩を受けたら決して忘れるな。
5)世譽不足慕 世誉(セイヨ)は慕(した)ふに足らず、
世間の名誉を得ようなどと思うな、
6)唯仁爲紀綱 唯だ仁のみを紀綱(キコウ)と為せ。
ただ仁を心のより所にせよ。
7)隱心而後動 心に隱(はか)りて後(のち)動け、
心のなかで十分考えてから行動に移せ、
8)謗議庸何傷 謗議、庸何(なん)ぞ傷(いた)まん。
そうすれば人に誹謗(ヒボウ)され心を痛めることもないだろう。
9)無使名過實 名をして實に過(す)ぎしむること無かれ、
実績以上の評判がたたないようにせよ、
10)守愚聖所臧 愚を守るは聖の臧(よみ)する所なり。
愚直を守ることこそ聖人の奨励すること。
11)在涅貴不湽 涅に在りて緇まざるを貴(たっと)び、
黒い泥の中にあっても黒く染まらないことが大切、
12)曖曖内含光 曖曖として内に光を含め。
おろかなようでいて内に輝きをもて。
13)柔弱生之徒 柔弱は生の徒、
柔らかくしなやかなことがこの世を生きる道、
14)老氏誡剛強 老氏剛強を誡む。
老子も剛強を戒めている。
15)行行鄙夫志 行行たるは鄙夫の志、
強がりで威張りくさって生きるのはつまらぬ男の考えること、
16)悠悠故難量 悠悠たるは故より量り難し。
悠々とした生き方は、はかり知れないほど深い。
17)愼言節飲食 言を愼しみて飲食を節し、
言葉を愼み暴飲暴食をせず、
18)知足勝不祥 足るを知れば不祥に勝つ。
足りることを心得ておれば災いにも勝てる。
19)行之苟有恒 之を行ひて苟も恒有らば、
以上のことを常に行えば、
20)久久自芬芳 久久として自ら芬芳あらん
長い間おのずから香り続けるであろう。