おごりたかぶって、人を見下し、謙虚でないことをいう四字熟語です。
【傲】は「人+敖」からできた形声文字です。「敖」が音を表すのですが、この字は
「土(長髪)+方(死者)+攴(打つ)」で構成されていまして、呪いを祓う儀式を
表現する字として作られました。人と結びついて、呪霊をもって人に威圧的に
なるという意味になり、「おごる」ことを表します。
【岸】は、「きし」、「がけ」の意味のほかに「けわしい」、「かどだっている」と言う意味もあります。
ここから「かどかどしい」、「おごる」という意味が派生的にでてきました。
そこで【傲岸】は「おごりたかぶる」の意味になります。
【不】は否定、打ち消しの意味を表す字ですが、最初は草花の蔕(へた)を表す字として
作られました。仮に「否定、打ち消し」で使っていたのが、仮(かり)末代(まつだい)として
現代にいたってます。これを、文字の作り方、使われ方を示す『六書(リクショ)』のなかの
「仮借(カシャ)」といいます。
【遜】は、「辶+孫」からできた形声文字です。意味は「のがれる」、「したがう」、「ゆずる」です。
2010年に196字が新たに常用漢字となりましたが、【不遜】の【遜】もその一つです。
【傲岸不遜】とまとまった四字熟語は、探しきれませんでした。バラバラでは有ります。
【傲岸】は李白の『王十二の寒夜に独酌して懐(おもう)有るに答う』の詩に出てきます。
この詩には【馬耳東風】の四字熟語も出てきます。『今日の四字熟語』の【No.192 馬耳東風】にこの詩の解説が少し出ています。長い詩で、7言×50句の構成。 【傲岸】のところだけを示します。
37)一生傲岸、諧(かな)はざるに苦しむ
一生、傲岸に構えていると、世の人と仲良く出来ない
38)恩は疎に、媒は労して、志多く乖(そむ)く。
恩恵を受ける機会は少なく、中間に入った人は、徒に骨を折るばかりで、
普段の志の多くも、成功せぬものである。
【不遜】につきましては『論語』の「述而(ジュツジ)篇」、「陽貨(ヨウカ)篇」にでています。
① 奢(おご)れば則ち【不孫】。
② 【不孫】ならんよりは、寧(むし)ろ固なれ。
③ 【不遜】にして以て勇と為す者を悪(にく)む。
④ 唯 女子と小人とは養い難しと為す。之を近づくれば則ち【不遜】なり。