被害が次第に拡大して、ついには本体に及んでしまうことの譬えを表す四字熟語です。
コクゾウムシのような害虫が、外側の糠を食べつくして中身の米にまで及び、最期は全部やられてしまうという意味です。
【糠(ぬか)を舐(ねぶ)りて米(こめ)に及ぶ】と訓読みされます。
【舐】は、「舌+氏」の形声文字です。な・める、ねぶ・る、の意味があります。
【糠】は、「米+康」の形声文字です。ぬか、を意味します。 「糟糠の妻」に使われています。
【及】は、「人+又(手を表します)」の会意文字です。後より手を延して、前の人に追い及ぶ形を
文字化したものです。
【米】は、稲穂に実が付いている形を文字にした象形文字です。
出典は『史記』呉王濞(ヒ)列伝です。
前漢、第六代景帝(ケイテイ:B.C.157~B.C.141)のとき、御史大夫の鼂錯(チョウソ)が、以前からの持論である、諸侯の領地削減政策をじわじわと実施しました。
吳王濞は自国領地もそのうち削減対象になることを恐れ、謀反を決意しました。
すでに領地削減の憂き目にあっていた膠西(コウセイ)王を語らって、謀反をすすめる場面で
【舐糠及米】の例えを用います。
『今、景帝は姦臣(カンシン)に惑わされ,讒言(ザンゲン)を聽き入れ擅(ほしいまま)に
律令を變更し,諸侯の領地を略奪し,自分達で利益を求めること、日々激しくなって
きています。
ことわざに【糠を舐めつくして米に及ぶ】といいます。
吳と膠西は名を諸侯に知られるものですが,一旦検察を受ければ、領地削減は
間違いないことでございます』
これが、B.C.154年「呉楚七国の乱」の始まりです。
大昔から【舐糠及米】で人の国をとることは行われていたんですね。