「駟も舌に及ばず」は『論語』に出ている言葉です。
一度口に出した言葉は、特に失言めいた言葉は、世に早く伝わり、四頭立ての馬車でも追いつけません。言葉は慎まなければいけないことを言ってます。
棘子成曰、君子質而已矣。
棘子成(キョクシセイ)曰く、君子は質のみ、
衛の大夫棘子成が、君子は中身が充実していればそれで良い。
何以文爲矣。
何(なん)ぞ文を以て為(な)さん。
見た目はどうでもいい。
子貢曰、惜乎、夫子之説君子也。
子貢(シコウ)曰く、惜しいかな、夫子の君子を説くや。
これを聞いた子貢は、残念だな、あの人の人間論は(チト見当違いだな)。
駟不及舌。
駟も舌に及ばず。
一旦口から出た失言は四頭立ての馬車と雖(いえど)も取り返すことが出来ないと云います。
文猶質也、質猶文也。
文は猶(なお)質のごとく、質は猶(なお)文のごときなり。
文(人の外面)と質(人の内面)は表裏一体のものです。
虎豹之鞹、猶犬羊之鞹。
虎豹の鞹(カク:毛を取り去った皮)は、猶犬羊の鞹のごときなり。
虎や豹のみごとな毛皮を、わざわざ毛を剃り落として皮だけにしてしまうようなもので、
そんなことをしたら、犬や羊の皮と何ら変らなくなるではありませんか、と云った。