富める人を羨(うらや)んではいけない。
貧富は天の定めるものであるから、いちいちそれにこだわらないで、置かれた立場で最善を尽くしていればよい。『言志晩録』190条
富人(フジン)は羨むこと勿れ。
富める人を羨(うらや)んではいけない。
渠(か)れ今の富は、安(いず)くんぞ其の後の貧を招かざるを知らんや。
彼の今の富が、どうして後日の貧乏を招かないものか分らない。
貧人を侮る勿れ。
貧人を軽侮してはいけない、
渠れ今の貧は、安くんぞ其の後の富を胎(タイ)せざるを知らんや。
彼の今の貧しさがが、どうして後日の富のもとかもしれない。
畢竟(ヒッキョウ)天定(テンテイ)なれば、各々其の分に安んじて可なり。
結局、貧富は天の定めるものであるから、各人はその分に安んじていればよい。