陶潜(字:淵明)の『飲酒』二十首其十四の10句目。
【酒中有深味:酒中に深味あり】は、【酒中にこそ物事の本質が見えてくるのだ】という意味です。
故人賞我趣 故人 我が趣を賞し
昔馴染みは、我を知り
挈壺相與至 壺を挈(たずさ)えて相與(とも)に至る
壺を携えてみなでやってきた、
班荊坐松下 荊を班いて松下に坐し
草をしいて松の下に坐し、
數斟已復醉 數斟(スウシン)にして已に復た醉ふ
数杯を傾ければたちまちに酔う、
父老雜亂言 父老は雜亂して言ひ
年寄りたちの言葉は乱雑になり、
觴酌失行次 觴酌 行次を失す
杯が乱れ飛び、席も何もなくなった
不覺知有我 我の有るを知るを覺えず
私も自分のことを忘れて飲む、
安知物爲貴 安んぞ知らん物の貴しと爲すを
なんで世間の価値などわかろうか、
悠悠迷所留 悠悠たるものは留まる所に迷ふも
世俗で名利にこだわる者たちは、自分の地位にしがみつく、
酒中有深味 酒中に深味あり
酒中にこそ物事の本質が見えてくるのだ