物事を最期までりっぱに成しとげることを表す四字熟語です。終わりを全うすることを表します。
【有終の美を飾る】と使われます。
【有】は、「又と肉」から出来た会意文字です。肉を以て神に侑(すす)める意味で作られた字です。
有(あ)る、たも・つ、も・つ、の意味があります。
【終】は、「糸+冬」の形声文字です。
「冬」が音を表しますが、古代は「冬」を「シュウ」と発音していたそうです。 糸の末端を結び
とめる形で、「おわり」を表す字に「冬」が使われていました。のち秋・冬の「冬」を表す字と
なりまして、「おわり」をあらわす字として、糸を冬につけまして【終】が出来ました。
【有終】は、終を保つとか、終を全(まっと)うするという意味になります。
【之】は、象形文字で、足跡(あしあと)を表します。「歩」の上半分にあたります。足が前に進むことを
示している字です。「之」が、指示代名詞「これ」に用いられるのは「仮借」という用法です。
「これ」を表す文字がなかったので発音が同じ「之」を仮に借りて使うようになりました。
仮末代(かりまつだい)とでも言うのでしょうか。
【美】は、象形文字で、「ひつじ」の全体形を表している字です。白川静博士が甲骨文字の研究の結果、
発見しました。「美」は「ひつじ」の肥えた美しさを表し、神に薦(すす)めるべきものである
ということを表す字として使われていました。
善(神判によって勝利を得たもの)、義(犠牲に用いるひつじ)、羊がらみの字です。
『説文解字』で「羊+大」の会意文字としているのは、甲骨文字が知られていない、すなわち
発掘されていない時の解釈ですから、止むを得ないものがあると思います。
しかし現代の漢和辞典の多くは充分な考察もせず、『説文解字』の受け売りに終始しているのは、
嘆かわしいことです。と私は思います。
【有終之美】としてまとまった四字熟語は見当たらなかったのですが、『詩経』大雅・蕩に【有終】が出ていました。 ここでは【有終】の難しさを言っているようです。
初め有らざる靡(な)し、・・・・・・・・・・・・・・始めるときは誰でもやるけれども、
克(よ)く終り有ること鮮(すくな)し。・・・・・・・終りまでやり遂げる者は少ない。
終りまでやり遂げて、なお且つ終りを立派に仕上げるのは難しいことです。
それをやり遂げるのが【有終の美を飾る】と言うことになります。
7月25日から始まった第30回・ロンドンオリンピックは、8月12日閉会式です。