小さな現象から、事の大勢や本質を察知することを表す四字熟語です。
一枚の葉が落ちるのを見て、歳が暮れようとしていることを知るという意味から出来ました。
表現は違いますが、 前漢の『淮南子』、 北宋の道原の著『景徳(ケイトク)伝灯録(デントウロク):1004年』、 明の王象晋(オウショウシン)の作で植物図鑑に相当する『群芳譜(グンポウフ):1621年』に同意のことが記述されています。
歴史的に一番古い『淮南子・説山訓』には
【一葉の落つるを見て、歳の將(まさ)に暮れなんとするを知り】、
一枚の葉が落ちるのを見て、歳が暮れようとしていることを知り、
瓶中(ヘイチュウ)の冰(こおり)を睹(み)て、天下の寒きを知る。
瓶の中の水が凍っているのを見て、天下が寒くなったことがわかる
近きを以て遠きを論ずるなり。
これらは、手近なものから遠いものを推測するものである。
となっています。この中の【一葉の落つるを見て、歳の將(まさ)に暮れなんとするを知り】が、
李子卿(リシケイ)の「秋虫賦(シュウチュウフ)」に「一葉落つ天地の秋」となって見え、また北宋の詩話集『文録』に唐詩の一句として「一葉落ちて天下の秋を知る」となって出ているそうですが確認はしていません。
『景徳伝灯録』の問答の中に
問う、「杖子(ジョウシ)を豎起(ジュキ)す、意旨(イシ)如何(イカン)」、
師曰く【一葉落ちて、天下の秋を知る】。
明の王象晋の作『群芳譜』に五言絶句として
梧桐一叶落 梧桐一葉、落ち
天下尽知秋 天下ことごとく、秋を知る
梧桐一叶生 梧桐一葉、生(お)ひ
天下新春再 天下新たに、春再び
日本では、坪内逍遥の新歌舞伎の名作、『桐一葉』(1893年)でよく知られるようになったようです。
【桐一葉】は秋の季語で、『淮南子』由来となってます。
【梧桐(あおぎり】は、アオギリ科の落葉高木で、
【桐】は、 ゴマノハグサ科の落葉高木です。
8月7日立秋です。