杜甫の時代、人の寿命は五、六十代がせいぜいで七十以上の人が少なかったようです。
ですから七十を超える人は、昔から滅多にいない。人生果敢無いもんだ、ということになるのでしょう。
いまや『人生百年時代』です。頭しっかりで生き抜くコツは「漢字の読み書き」だそうです。
【人生七十古来稀】は杜甫の『曲江二首』の其の二、七言律詩の第4句目に在ります。
朝回日日典春衣
朝(チョウ)より回(かえ)りて日日(ひび)春衣(シユンイ)を典(テン)し、
朝廷から戻ると毎日春着を質に入れ(て酒を買い)
毎日江頭盡醉歸
毎日 江頭(コウトウ)に酔(よい)を尽くして帰る。
曲江のほとりで酔ってから帰宅する。
酒債尋常行處有
酒債(シュサイ)は尋常、行処(コウショ)に有り。
酒代のつけはあちこちに
人生七十古來稀
人生七十 古来稀なり。
古来、人生七十稀なリや
穿花蛺蝶深深見
花を穿(うが)つ蛺蝶(キョウチョウ)は深深(シンシン)として見(あらわ)れ、
チョウは、花の茂みを深々と見え隠れ
點水蜻蜓款款飛
水に点ずる蜻蜓(セイテイ)は款款(カンカン)として飛ぶ。
トンボは、しっぽを水にちょんちょんと
傳語風光共流轉
語を風光に伝(つた)う共に流転(ルテン)し、
春景色に伝言す、チョウやトンボと飛び回り
暫時相賞莫相違
暫時(ザンジ)相(あ)い賞して相(あ)い違(たが)うこと莫(なか)れ、と。
このひと時を、違うことなく賞玩しよう