寒さの厳しい雪の中でも松や柏は緑の葉の色を変えないことから、志や節操が固いことのたとえです。
【柏】は、ブナ科の落葉樹「かしわ」ではなく、檜(ひのき)・椹(さわら)・側柏(このてがしわ)などの
常緑樹の総称です。
【雪中松柏】は南宋時代末期の中国の政治家であり学者であった謝枋得(シャホウトク:1226年~1289年)の七言律詩にでています。
社枋得は豪爽で、直言、忠義をもって務めたと言われています。常に国家存亡を考えていたそうです。
1275年にモンゴル軍が南下すると長江沿岸の防備を任され、南宋を守るために奮闘しましたが破れてしまいました。
元(ゲン)のフビライ・ハーンからの再三再四の招聘に対しては「亡国の大夫」であるとして拒絶してましたが、1288年第5回目の招聘があり、周囲の人に強要され北京に赴く事になりました。
死を覚悟した謝枋得は妻子・友人に七言律詩を示し、道中から絶食し至元26年(1289年:63歳)4月の北京到着直後に没しました。
雪中松柏愈青青
雪中の松柏は愈(いよいよ)青青
この志 ますます燃えなん
扶植綱常在此行
綱常(三綱と五常。人の道)を扶けて植(た)てるは此の行(たび)に在り
人の道をたてるは この旅に在り
天下久無龔勝潔
天下久しく 龔勝(キョウショウ:二君に仕えるを恥じ、食を断って死)の潔なし
ついぞしばらく 龔勝の潔(いさぎよ)さなし
人間何獨伯夷清
人間何ぞ獨り伯夷のみ清からん
この世で清しは 伯夷のみ
義高便覺生堪捨
義は高く便(すなわ)ち覺ゆ 生の捨つるに堪えんと
義は高く 生を捨てるに悔いなし
禮重方知死甚輕
禮は重く 方(まさ)に知る死の甚だ輕きを
禮は重く、死は甚だ軽く
南八男兒終不屈
南八(南斉雲:安禄山の乱で義を重んじ最後まで戦った)は男兒 終に屈せず
南八は男児なり 終(つい)に屈せず
皇天上帝眼分明
皇天上帝 眼は分明
お天道様はお見通し
詩中『綱常』は、三綱五常の事です。
三綱は、君臣、父子、夫婦の道。
五常は、仁、義、礼、知、信。