川や沼などを背にして、逃げ場をなくした陣立てをいいます。必死の覚悟であることを表す意味を表してもいます。
前漢の功臣韓信(カンシン)が趙と戦ったとき、後方に川のある場所に陣取って、水を背にして退くことのできない決死の覚悟をさせ、趙を破ったという故事に基づいた四字熟語です。
漢王の三年(B.C.204年)、韓信は張耳(チョウジ)とともに趙に進撃しました。韓信の来襲を知った趙は急遽、二十万の兵を井陘口(セイケイコウ)に集結し、堅固な城塞をきずいて待ちうけました。
決戦にあたり、韓信は兵一万をコッソリと先発させて、趙の城塞の近くの山にかくれさせました。本隊は川を背にして陣を構えさせました。趙軍は、川を背にして陣どっている韓信の軍をみて、大いに笑いました。
結果は韓信軍の大勝利でした。
戦い終った祝宴のとき、部将たちは韓信に聞きました。
「兵法には、山を背に、水を前にして戦えとあります。然るに、今回は水を背にして戦い、ついに勝利を収めました。これは、いかなる戦術でありましょうか」
韓信が答えました。
「これも兵法なのだ。己(おのれ)を死地に陥(おとしい)れて、はじめて生を得る。それを応用したのが、今回の【背水之陣】なのだ」
この話は、『史記・淮陰候(ワイインコウ)列伝』と『十八史略』とにあります。