【恍恍惚惚】は、『恍惚』を強調させた言い方です。
【恍惚:コウコツ】は、
① ぼんやりして見定めがたい様子。
② うっとりする様。ぼんやりする様。われを忘れるさま。
を表す、双声の擬態語と言われています。
『双声』と言いますのは、二字のそれぞれの字のはじめの子音(声母:セイボ)が同じであることを言います。
【恍惚】の場合は、kou-kotu の「k」が同じであるからということになります。
【磊落:ライラク】や【髣髴:ホウフツ】も双声の擬態語です。
因みに「双声」の正字体表記は「雙聲」です。
ついでに「雙」は、二羽の隹(とり)を手で持つことから、「ふたつ」の意味になりました。
二葉亭四迷『浮雲』に【恍恍惚惚】がみられます。
それにしてもこの疑念はどこから生じたものであろう。
天より降ったか地より沸いたか、そもそもまた文三のひがみから出た
【蜃樓海市:シンロウカイシ。現実味のない手前勝手な想像】か、忽然として生じて
思わずして来たり、【恍恍惚惚】としてその来所(ライショ)を知るに由なしといえど、
何にもせよ、あれほどまでにあがきつもがきつして穿鑿(センサク)してもわからなかった
いわゆる冷淡中の一物(イチブツ)を、今わけもなく造作(ゾウサ)もなくツイチョット
突き留めたらしい心持がして、文三覚えず身の毛がよだった。