一字の使い分けで、人を褒(ほ)めたり、貶(けな)したりすることを表す四字熟語です。
魯という国の歴史書を『春秋』と言います。
魯国の史官が書いた『春秋』を孔子が手を加え、【一字褒貶】と言われる簡潔な表現方法で、
厳しく歴史批評を行ったと言われています。
これを【春秋の筆法】と言います。
【一】は、数のはじまりを表す字で、指事文字です。改竄を防ぐためには壹(壱)を用います。
【字】は、宀+子の会意文字です。子が生まれて一定の日数が過ぎると廟に出生を報告する儀式を
行うことを示す字です。その時幼名をつけます。それを字(あざな)といいます。
【褒(襃)】は、衣+保の形声文字です。現在の形は保になっていますが、字源的にはカッコ書きのように
子を抱く形です。子を抱いて懐がふくらんで「ひろい、ゆるやか」が本来の意味でした。
それが「ほめる」の意味にも使われるようになりました。
【貶】は、貝+乏の形声文字です。乏は、とぼしい、しりぞける の意味があります。貝は財貨です。
財貨がたりない、「へる」の意味や「そしる」の意味を表します
『春秋』は儒学の経典『五経(ゴキョウ:春秋・詩経・礼記・易経・書経)』の一つです。
経典『春秋』の注釈書を「伝」と言いまして、三種類あります。左氏伝・公羊伝・穀梁伝です。
諸子の解釈を集めたものが集解(シッカイ)です。
西晋の政治家であり学者である杜預(トヨ:222~284)は『春秋経伝集解』を著しました。
その『春秋経伝集解』の序文に
春秋雖以一字爲褒貶、
春秋は一字を以て褒貶を為すと雖(いえど)も、
春秋は一字で褒めたり、貶(けな)したりしていると言われるが、
然皆須数句以成言。
しかれどもみな数句を須(もち)いて言を成す。
実際にはいくつかの句を用いて文章を構成している。
杜預は、その【春秋筆法】を【一字褒貶】と言うのは誇張だと言うのですが、【一字褒貶】で覚えられています。
今日、12月12日は『漢字の日』です。
日本漢字能力検定協会(漢検)が1995(平成7)年に制定しました。
「いい(1)じ(2)いち(1)じ(2)」(いい字1字)の語呂合せで12月12日にしたそうです。
毎年、その年の世相を象徴する「今年を表現する漢字」を全国から募集し、
この日に京都の清水寺で発表されます。
『今年の漢字』はなんでしょう