大変に優れた文字や文章のことを言います。漢字一字に優劣がある訳ではなく、使われ方や表現に優劣があるということです。『史記:呂不韋(リョフイ)列伝』に出ている話です。
呂不韋は戦国時代、秦の宰相で、始皇帝の父とも言われ、後に蜀に流されて自殺しました(?~B.C.235)。
始皇帝は年少(13歳)で即位したので、呂不韋が宰相となって国を治めていました。當時、
魏に信亮君(シンリョウクン)
楚に春申君(シュンシンクン)、
趙に平原君(ヘイゲンクン)、
齊に孟嘗君(モウショウクン)、
謂うところの四君がたがいに競い合っていました。
呂不韋は及ばないのを羞じ、四君にならい士を集め食客三千人としました。そうして食客諸子に各人が見聞きしたところを書かせ、二十余万字からなる、後世『呂氏春秋』と呼ばれる書物を完成させました。
この書を秦の国都咸陽の市の門に並べ、千金を懸賞金として、諸国の賓客(ヒンキャク)を招き、
「能(よ)く一字を増損(ぞうそん)する者有らば、千金を予(あた)えん」
と宣言しました。 これが『一字千金』の話の起こりです。