すぐれた人物が大勢いることを表す四字熟語です。
【多士】は、多くのすぐれた人材の意味です。
【済々】は、呉音で『サイサイ』、漢音で『セイセイ』と呼びまして、数が多く立派な様子を言います。
同じ発音を重ねた、『畳語:ジョウゴ』と言われている擬態語の一つです。
『滾々:コンコン』、『滔々:トウトウ』、『洋々:ヨウヨウ』、『綿々:メンメン』も『畳語』です。
出典は『詩経』大雅・文王です。
『詩経』は中国最古の詩集。五経の一。儒教の経典として伝えられています。西周初期(B.C.1100頃)から春秋半ば(B.C.600頃)の詩が集められています。『風』、『雅』、『頌(シヨウ)』の三部構成。305篇
『風』は国風ともいい、黄河流域の諸国の民謡、160篇。
『雅』は宮廷の音楽で大雅・小雅に分かれ105篇
『頌』は宗廟(ソウビョウ)の音楽や祭祀の詩で周頌・魯頌・商頌の三つに分かれ、40篇が伝えられています。
現存のものは漢代の毛亨( モウコウ)が伝えたとされ、「毛詩」とも言われています。
【多士済々】は『詩経』大雅・文王のところに出ています。4言×56句の長い詩ですので、【多士済々】の出ているところを抜粋しました。
19句)思皇多士、 思(ここ)に皇(コウ)たる多士、
徳を備えし幾多の賢士
20句)生此王國。 此の王國に生まる。
皆な周の国に生じたり。
21句)王國克生、 王國に克(よ)く生まる、
周よくこれを生育す、
22句)維周之楨。 維れ周の楨(テイ)。
これ皆な周の幹とならん。
23句)濟濟多士、 濟濟たる多士、
多士濟濟、
24句)文王以寧。 文王以て寧(やす)んぜり。
文王も天にあって寧じておられる。