【桑中(ソウチュウ)の喜び】と訓読されまして、桑畑の中で男女がひそかに会う楽しみを言ってます。
大昔、中国では、桑畑の中で逢引をしていたようですし、また、桑の木を目印としてその下で逢引するとも言われていました。
『詩経』鄘風(ヨウフウ)篇に桑中(ソウチュウ)という詩が記載されています。
爰采唐矣、沬之鄉矣。
爰(ここ)に唐を采(と)る、沫(まい)の郷に。
ここに、ねなしかずらを摘んでいるよ、沫(マイ)の郷(さと)で。
云誰之思、美孟姜矣。
云(ここ)に誰をか之(これ)思ふ、美なる孟姜(まうきやう)。
誰のことを思い慕っているのか、美しい姜(キョウ)姉さん。
期我乎桑中、要我乎上宮、送我乎淇之上矣。
我を桑中に期し、我を上宮に要し、我を淇(き)の上(ほとり)に送る。
桑畑で待っていておくれ、上宮で私を求めておくれ、
淇(キ)水のほとりに私を送つておくれ。
爰采麥矣、沬之北矣。
爰に麦を采る、沫の北に。
ここに、麦を摘んでいるよ、沫(マイ)の北で。
云誰之思、美孟弋矣。
云に誰をか之思ふ、美なる孟弋(まうよく)。
誰のことを思い慕っているのか、美しい弋(ヨク)姉さん。。
期我乎桑中、要我乎上宮、送我乎淇之上矣 。
我を桑中に期し、我を上宮に要し、我を淇の上に送る。
桑畑で待っていておくれ、上宮で私を求めておくれ、
淇(キ)水のほとりに私を送つておくれ。
爰采葑矣、沬之東矣。
爰に葑(ホウ)を采る、沫の東に。
ここに、葑(かぶら)を摘んでいるよ、沫(マイ)の東で
云誰之思、美孟庸矣。
云に誰をか之思ふ、美なる孟庸(もうよう)。
誰のことを思い慕っているのか、美しい庸(ヨウ)姉さん。
期我乎桑中、要我乎上宮、送我乎淇之上矣。
我を桑中に期し、我を上宮に要し、我を淇の上に送る。
桑畑で待っていておくれ、上宮で私を求めておくれ、
淇(キ)水のほとりに私を送つておくれ。
10月30日は、1896(明治29)年、島崎藤村が『文学界』46号に『こひぐさ』の一編として初恋の詩を発表しました。それに因んで、長野県小諸市の中棚荘が『初恋の日』として制定しました。