鯨のようにたくさんの酒や水を飲み、馬のようにたくさん食べることを表す四字熟語です。
【鯨飲馬食】とまとまった形の四字熟語はないようです。
【鯨飲】は史記・范雎(ハンショ)蔡沢(サイタク)列伝に出ています。
【馬食】は杜甫の『飮中(インチュウ)八仙(ハッセン)歌』に出ています。
戦国時代、魏の人范雎が秦昭王(ショウオウ:B.C.306~B.C.251)に「遠交近攻」を献策し王の信任を得て宰相にまで上り詰めました。
魏の国にいた時、宰相の魏齊(ギセイ)と須賈(シュカ)に、今で言うならば冤罪で死ぬ目にあわされました。
須賈が秦に来た時、昔の報復として、『史記』の記述は
【須賈を堂下に座らせ、その前に芻(まぐさ)と豆を置き、馬のように食らわせながら、責めて言った。「魏王に告げよ。魏齊の首を持ってこい。さもないと、国都を滅ぼすぞ、と」】
でした。
【馬食】は、ただたくさん食べるというのではなく、箸を使わず馬のように、じかに口で食べるということを言っているようです。
一方【鯨飮】は唐の時代、長安では愛酒家として名の高い人物として八人が知られていました。
杜甫の『飮中八仙歌』に八人の中の左相(サショウ)のことを歌って
左相 日興(ニッキョウ)万錢(バンセン)を費(ついや)す
左相は遊びに大金を使い、
飲むこと長鯨(チョウゲイ)の百川(ヒャクセン)を吸ふが如し
飲みっぷりたるや、鯨が川を飲み干す如く
杯を銜み聖を樂しみ賢を避くと稱す
酒を楽しみ、賢者を避けると嘯(うそぶ)く
鯨が川を飲み干してしまう様子を【鯨飮】と称しています。