いずれの主義や党派にも加わらないことを表す四字熟語です。
【不偏】は偏(かたよ)らないことです。「遍」と書き誤ることがあるようです。
「扁:ヘン」を共通部分とする字は、「扁平:ヘンペイ」、「遍歴:ヘンレキ」、「褊狭:ヘンキョウ」、「前篇:ゼンペン」、「編集:ヘンシュウ」、「翩翻:ヘンポン」、「蝙蝠:ヘンプク。こうもり」、「騙詐:ヘンサ。だます」があります。
【不党】も、かたよらないという意味になります。【党:トウ】はいろんな意味をもっています。①はっきりしない、②なかま、③むら、④まじわる、⑤たすける、⑥かたよる、⑦おもねる、⑧多い、⑨みうち、⑩しきりに、⑪善い、⑫こいねがわくば、などがあります。
【不偏不党】はかたよらないことを強調して、公正・中立の立場をとることを表しています。
『墨子』兼愛篇に【不偏不党】、【不党不偏】両方が出ています。
周詩に曰く、王道蕩蕩(トウトウ)たり、偏せず党せず。王道平平たり、党せず偏せず。其の直(なお)きこと矢の若く、其の易(たい)らかなること厎(といし)の若し。
周詩(詩経)にいうように、
王道は平易であって、かたよらずわたくしせず。
王道は平明であって、わたくしせずかたよらず。
その真っ直ぐなことは矢のようであり、その平らかなることは砥石のようである。
『墨子』は戦国時代初期の墨翟(ボクテキ)およびその門人の学説を集めたもので、墨翟の弟子や後人が著したものと言われています。
墨翟の思想は、兼愛(博愛主義)・非攻・節倹のように理想主義的なものであったため、当時勢力争いのさなかにある諸侯の考え方とは相容れないものが有りまして、どちらかというと敬遠され気味でした。
孟子には異端邪説として攻撃されました。
墨子の思想は諸子百家の時代を過ぎてから、中国でほとんど顧みられませんでした。近年、清末になって、墨子の思想はキリスト教の思想に似ているということで再研究が始められたそうです。
【党利党略】に明け暮れしている、当代の政治家諸先生とは対極にあるのが【不偏不党】と思われます。