「株を守りて兎を待つ」と訓読みされます。
木の切り株を見守って兎を待つことから、偶然の出来事をあてにする愚かさのたとえです。
そうして、このたとえから、古い習慣やしきたりにとらわれて進歩の無いことの揶揄を表しています。
出典は『韓非子』の五蠹(ゴト)篇です。始皇帝も愛読したと言われている五蠹篇は、国家を木にたとえた場合、その木を蝕(むしば)み弱体化させる五匹の蠹(ト:木喰い虫)のことを言います。
『韓非子』で言われている五匹の虫は、以下です
① 学者 ・・・・・・・・・・・・・ 役に立たない理論で君主を惑わす
② 雄弁家 ・・・・・・・・・・・・・口先だけの外交で国家の利益を損なう
③ やくざ者 ・・・・・・・・・・・・法を無視してその価値を下げる
④ 権力者の側近 ・・・・・・・・・・地位を悪用して賄賂で資材を貯め込む
⑤ 商工従事者 ・・・・・・・・・・・自らでは生産せず、農民から搾取している
あくまでも、韓非子が言っている話です。 浅野裕一著 『諸子百家』のまとめより。
【守株待兎】の話は、多くの人がご存知かと思いますが、概略次のような話です。
昔、宋の国に農民がいました。畑の隅に切り株があり、ある日そこに兎がぶつかり、首の骨を折って死んでしまいました。次の日から鍬(くわ)を捨て、また兎がこないかと待っていましたが、二度と来ませんでした。 そのために作物は実らず、国の笑いものになりました。
ここから守株(しゅしゅ)という成句ができましたし、童謡の『まちぼうけ』もこの【守株待兎】を元にして作られました。
韓非子は、古の聖人の徳治を行うべきだという儒家の主張を批判し、「昔のやり方をそのまま用いるのではなく、時代に合わせて変えるべきだ」という意見を持っていました。
因みに待ちぼうけの歌詞を書いてみました。
① 待ちぼうけ、待ちぼうけ ある日せっせと、野良稼ぎ
そこに兎がとんで出て ころりころげた 木のねっこ
② 待ちぼうけ、待ちぼうけ しめた。これから寝て待とうか
待てば獲物が驅けてくる 兎ぶつかれ、木のねっこ
③ 待ちぼうけ、待ちぼうけ 昨日鍬取り、畑仕事
今日は頬づゑ、日向ぼこ うまい切り株、木のねっこ
④ 待ちぼうけ、待ちぼうけ 今日は今日はで待ちぼうけ
明日は明日はで森のそと 兎待ち待ち、木のねっこ
⑤ 待ちぼうけ、待ちぼうけ もとは涼しい黍(きび)畑
いまは荒野の箒草(ほうきぐさ) 寒い北風木のねっこ