能力のない者が、高い地位に居たり、得意になってわめきちらすことを表している四字熟語です。
【瓦釜】は、素焼きの土製の釜。小人物のたとえ。
【雷鳴】は、雷のような大きな音を立てることです。

【瓦釜雷鳴】は『楚辞：ソジ』に出ています。

『楚辞』は、中国南方楚の国を中心に紀元前300年頃からの歌謡を集めた書です。北方の『詩経』と並んで、二代詩集とされています。屈原（B.C.343頃～B.C.277頃）の「離騒」、「漁父」、「九章」が有名です。

屈原は戦国時代の楚の人です。王族に生まれ、懐王（B.C.328～B.C.299）の側近として活躍しましたが、当時強大な秦に対して、反秦の姿勢を崩さなかったことから、反対派の讒言に遭い頃㐮王（ケイジョウオウ：B.C.298～B.C.263）のとき流罪になりました。失意の内、汨羅（ベキラ）に投身してしまいます。
人望の厚かった屈原を偲び、命日の5月5日に、楚の人達は、舟で川に行き，太鼓を打って魚をおどし，粽（ちまき）を投げて，「屈原」の死体を魚が食べないようにしたそうです。
端午の節句に粽は、屈原の故事に由るようです。

【瓦釜雷鳴】は『楚辞』の卜居（ボクキョ）というところに出ています。屈原の作といわれていましたが近年疑問視されています。【瓦釜雷鳴】の前後を、読み下し文と私訳で併記します。

世、溷濁（コンダク）して清（す）まず。・・・・世は乱れ腐っている。
蝉翼（センヨク）を重しと 爲（な）し，・・・・・蟬の羽みたいな軽い奴が、重宝され
千鈞（センキン）を輕（かろ）しと 爲す。・・・・千鈞の重みのある立派な人が、軽んぜられ、
黄鐘（コウショウ）を毀棄（キキ）し・・・・・　礼学に秀でた人が、唾棄（ダキ）される，　　　　　　
瓦釜（ガフを雷鳴す。・・・・・・・・・・・・・ 凡人にわかに騒ぎだし
讒人（ザンニン）高張し，・・・・・・・・・・・ 讒言（ザンゲン）する者、声高（こわだか）に
賢士　名　無し。・・・・・・・・・・・・・・・ 賢人、世に知られなく
吁嗟（アア）默默として，・・・・・・・・・・・ ああ　むなしいな
誰か吾の廉貞（レンテイ）を　知らんや。・・・・ 私の潔白さを、誰も知ってくれない。