人がする前に、自ら実行することです。同じような意味で『率先垂範(そっせんすいはん)』がありますが、こちらはむしろ集団のリーダーに求められる資質の一つのように受け止められているようです。 『率先垂範』なさった方のドヤ顔が見えそうです。
『率先躬行』の方は、自分みずからの意志で行う、という「躬行」に力点が置かれます。「躬」は「身」と音符を表す「弓」から成る、形声文字で「みずから」という意味を表す字です 《※末尾参照》。
「率先」と言う言葉は、『史記・絳侯周勃世家(こうこうしゅうぼつせいか)』に出ています。 前漢文帝(B.C.180~B.C.157)のとき、文帝が丞相周勃に「前日、わしは列侯に領地に帰るように命じたが、まだ出発していない。 ここはひとつ、彼らに率先して領地に帰って貰いたい」 という史実で述べられています。
「躬行」という言葉は、『論語』の中で孔子が「君子を躬行することは、則ち吾未だ之を得ること有らず。(君子の行いをみずから行うことを、わたしはまだなかなか出来ないのだ)」と言っていたと書かれています。
『率先躬行』といい『率先垂範』といい、いずれも二字熟語の合成で出来たもので、『四字熟語』としてまとまった形では中国古典の中では見当たらないようです。また「率先」を「卒先」と書くのは本来間違いです。
「率」は音読みでソツ・リツ、意味は「ひきいる」、熟語として「引率」「能率」があります、
「卒」は音読みでソツ、 意味は「おわる」、 熟語として「卒業」「卒年」となります。
東日本大震災で、いち早く物資を運んでくれた方々、何かの足しにしてと義捐金を送って下さった方々、休みの日でないと行けないのでとボランティアで駆けつけて頂いた方々 東北の被災地は多くの方々の『率先躬行』に支えられています。
※「字源について」
字源を解かれている殆どの学者さんは『説文解字:許愼著A.D.100』を、何等疑うことなく盲信して典拠としています。許愼の時代、「甲骨文字」は知られていませんでした。最古の文字「甲骨文字」まで遡って字源を解かなければ正しい答は得られません。白川静さんが『説文新義』を表し『説文解字』の全文字について字源の正誤を明らかにしました。辞典として『字通/平凡社刊』が発売されています。字源解説について日本の漢和辞典のほとんどは『説文解字』の受け売りですので、(現時点で)正しいと思われる字源を知りたい方は一度『字通』をご覧になると宜しいと思います。お薦めします。
字源に関しまして小欄では『白川文字学』をベースに説明させて頂いてます。