無用の心配をすること、また取り越し苦労をすることを表す四字熟語です。
杞國に、人の天地崩墜(ホウツイ)して、身寄る所亡きを憂へて、寝食を廃する者有り。
杞の国に、ある人で、天地が崩れ落ちて、身のおきどころがなくなるのを
心配して、落ちついて生活を続けることが出来ないでいる者がいました。
【杞人天憂】の冒頭の件(くだり)です。
『列子』天瑞(テンズイ)の第十四章が、【杞人天憂】の出ているところです。
【杞人天憂】が省略されて【杞憂:キユウ】となりました。
天地が崩れ落ちる、と心配している人に
「天は 、大気が集まったものだから、崩れることなんかないよ。心配しなさんな」
というと
「天が 、大気の集まりだったとしても、太陽や月、星は落ちてこないのかね」
「大地がこわれたらどうするんだ」
矢継ぎ早の【杞憂】です。
答えた人が偉かった
「月や星なども、大気の中で光ってるんだから、たとえ落ちてきても、人を傷つけることなんかないよ」
「大地は、大きな塊で、四方八方ギッシリ詰まっているから、壊れることなんかないよ」
ウソともホントともとれるような話で【杞憂】の彼氏を納得させました。
『列子』はさらに続けて
壊れると言う者にも一つの道理があり、壊れないと言う者にも一つの道理がある。
生は死を知らないし、死は生を知らない。
将来は過去を知らないし、過去は将来を知らないのである。
禅問答みたいですね。