君主が美女に惑わされて、諫臣(いさめる忠臣)の言葉も聞き入れず、国を滅ぼしてしまうことを言います。
『戰國策』秦策の一節です。
田莘之(デンシンシ)之、陳軫(チンシン)の為に、秦の惠王に説きて曰く、
田莘之が、友人の陳軫(チンシン)のために、秦の惠王に説いて言うには
臣、王の郭(カク)君(郭の君主、名は醜)の若くならんことを恐る。
私は、王様が昔の郭君のようにおなりにならねばよいがと、心配しております。
夫れ晉の獻公、郭を伐たんと欲して、舟之僑(センシキョウ:郭の賢臣)の存するを憚(はばか)る。
と申しますのは、晉の獻公(ケンコウ)は、郭の國を伐(う)ちたいと思いながら、
郭の國には、舟之僑という賢大夫がいるので、遠慮しておりましたところ、
荀息(晋の上卿)曰く、
荀息が、晉の獻公に申し上げました、
周書に言える有り、美女は舌を破る、と。
『周書』に、美女は舌を破る、すなわち、美女は諫臣の舌に打ち勝つ、とございます。
乃ち之に女樂を遺り、以て其の政を亂す。
というので、晉の獻公は郭の國に歌姫を贈って、郭の國の政治を攪乱しました。
舟之僑、諫むれども聽かれず。遂に去る。
郭の賢臣:舟之僑(センシキョウ)は、郭君を諫めましたが聞き入れられなかったので、
とうとう立ち去りました。
因りて郭を伐ち、遂に之を破る。
よって、晉の獻公は郭の國を伐って、とうとうこれを打ち破りました。