栄誉を受けたり、恥辱を被ったり、財産を得たり失ったりする世俗的な関心事のことを表した四字熟語です。
【栄辱】は、栄誉と恥辱のことを言います。
【得喪】は、得ることと、失うことを表わします。
夏目漱石『草枕』の一節です。
燦爛(サンラン:あざやかにかがやく)たる彩光は、炳乎(ヘイコ:明らかなさま)として昔から
現象世界に実在している。
只 一翳(イチエイ)眼(まなこ)に在って空花乱墜(クウゲランツイ/迷いや煩悩があると、
心が乱れてしまって正しい認識を得ることができないということ)するが故に、俗累の羈絏牢
として絶ち難きが故に、【栄辱得喪】のわれに逼(せま)る事、念々切なるが故に、ターナーが
汽車を写すまでは汽車の美を解せず、応挙が幽霊を描くまでは幽霊の美を知らずに打ち
過ぎるのである。
文中の『一翳眼に在って空花乱墜す』は、迷いや煩悩があると、心が乱れて正しい認識が得られないという意味です。目にちょっとでも曇りがあると、何もない空に花が乱れ落ちるように見えることを言います。
『景徳伝登録』を出典としています。