兄弟の閒の麗(うるわ)しい情愛を言います。
【棣:テイ】は、「にわうめ」のことを言います、【鄂:ガク】は、花の「がく」を言います、【萼:ガク】と同じです。「にわうめ」の花の「がく」が、花を支えて寄り添うように咲いているのを見て、人も、心を寄り添わせた兄弟が一番いい、という『詩経』の常棣(ジョウテイ)という詩から生まれた四字熟語です。
常棣(ジョウテイ)の詩は4句を1章として合計8章から成り立っています。
1章 常棣之華、鄂不韡韡。
常棣(ジョウテイ)の華(はな)、鄂(ガク)韡韡(イイ)たらざらんや。
にわざくらの花は、輝くばかりに咲き誇る。
凡今之人、莫如兄弟。
凡(およ)そ今の人、兄弟に如(し)くは莫(な)し。
世に人あれど、兄弟が一番だろうよ。
以下、8章まで【棣鄂之情】のいろいろが詠われています。
その中で【兄弟鬩牆:ケイテイゲキショウ。兄弟 牆(かき)に鬩(せめ)ぐ】という四字熟語が、
漢検1級の範囲になっていますので、覚えていたのですが、その解釈を間違って覚えて
いたようです。
『新釈漢文大系』詩経中181頁によりますと
第4章は、冒頭の「兄弟鬩于牆、外禦其務」の2句を「兄弟は家中では争うことがあっても、
家の外では侮りをふせぐために立ち向かうものである」と解釈するのが従来の節であったが、
「語釈」の部分で既に述べたように、これは、
兄弟(同族の人間)が居住地(牆:かきね、の内側)の外側でよその攻撃から一族を守る意である。
だそうです。知らなかった。