【富めば則(すなは)ち事(こと)多し】と訓読されまして、金持ちになると面倒な出来事が多くなる、という意味の四字熟語です。出典は『荘子』天地篇です。
古代の聖天子:堯が華という土地に遊びに行ったとき、そこの国境役人が話しかけてきました。
「聖人を祝福させてください。聖人が長生きでありますように」
堯は「お断りします」と、答えました。
「聖人が金持ちであられるように」
堯は「お断りします」と、答えました。
「聖人に男子のお子がたくさん産まれますように」
堯は「お断りします」と、答えました。
国境役人もいささか頭に来たんじゃないでしょうか
「誰もが望むことを、なぜ断るのですか」
堯曰、多男子則多懼、
尭(ギョウ)曰く、男子(ダンシ)多(おお)ければ則(すなは)ち懼(おそ)れ多く、
堯が答えました、男の子をたくさん持つと心配ごとが多く、
富則多事、
富(と)めば則(すなわ)ち事(こと)多(おお)く
金持ちになると面倒な出来事が多くなる、
壽則多辱。
寿(いのちなが)ければ則(すなは)ち辱(はじ)多し。
長生きすると辱めを受ける事も多くなる
是三者非所以養德也。
是(こ)の三者(サンシャ)は徳(トク)を養(やしな)う所以(ゆえん)に非(あら)ざるなり。
この三つの事は、本来の徳(もちまえ)を養うためのものではありません。
故辭。
故(ゆえ)に辞(ジ)す、と。
だから、お断りしたのです。