腹いっぱい食べて、食った食ったと腹鼓(はらつづみ)を打ち、トントントンと地べたを打って拍子をとり、ゴクラク極楽と心から思う。平和で安楽な生活を喜んで送っている様子を表している四字熟語です。
【鼓腹】は、腹つづみを打つこと。
【撃壌】は、地面を打って拍子をとることです。
【鼓腹撃壌】は13世紀、宋末元初の曾先之(ソウセンシ)による『十八史略』に出ています。
中国古代の伝説時代に理想の天子として登場した堯帝に纏(まつ)わる話です。
天下を治めて五十年が経ったが、天下が平安なのかどうなのか、万民が自分を天子としてあがめることを願っているのかどうなのか、トンと分からなかった。
側近に聞いたが分からないと言うので、目立たない服装をして、お忍びで大通りを出歩いた。
童謡が聞こえてきました
立我烝民 莫匪爾極
我が烝民(ジョウミン)を立つるは 爾(なんじ)の極に匪(あら)ざる莫(な)し
私たちが無事に生活できるのは 、すべてあなたの立派な徳のおかげです。
不識不知 順帝之則
識(し)らず知(し)らず 帝の則(のり)に順(したが)うと
知らず知らずのうちに、帝の法に従っています。
出来すぎた話だ。親達に云わされているのだろうと思いつつ、通りを歩き続けました。
有老人、含哺鼓腹、撃壤而歌曰、
老人有り、哺を含み腹を鼓(つづみ)うち、壌(ち)を撃(う)ちて歌ひて曰く、
老人が、食べ物を口に含み腹つづみをうち、足で地面を踏み鳴らして
拍子をとりながら、
歌っていた。
日出而作 日入而息
日出でて作(な)し、日入りて息(いこ)ひ、
日が昇れば働いて、日が沈めば休息し、
鑿井而飮 耕田而食
井を鑿(うが)ちて飲み、田を耕(たがや)して食らふ、
水が欲しけりゃ井戸を掘り、田を耕せば、食べられる。
帝力何有於我哉
帝力(テイリョク)何(なん)ぞ、我に有らんや、と。
天子の力が、どうだろと、わしらの暮らしにゃ、カンケイネェ~。
堯帝はニンマリ
『これでいいのだ。何の不安も無く、【鼓腹撃壌】して、生活を楽しんでいる。これこそ私の政治が上手くいっている証拠だ。さて、宮中へ帰って、わしも一杯やるか』