良い悪いは別として、なんでもハイハイと人の言うことに従う様子を表している四字熟語です。
中国戦国時代末期の法家である韓非(B.C.280~B.C.233 )の著書『韓非子』にでています。
その中で【唯唯諾諾】は、「八姦篇」と言いまして、八つの姦(悪事)とそれを防ぐ方法について述べている篇に出ています。「姦(悪事)」は、臣下(家来)が君主の権力を侵害するという悪事を言ってます。
① 同牀(ドウショウ) :君主と添い寝をする女性を利用する悪事。
② 在旁(ザイボウ) :君主の側近を利用する悪事。
③ 父兄(フケイ) :肉親・重臣を利用する悪事。
④ 養殃(ヨウオウ) :君主のわざわいを助長させる悪事。
⑤ 民萌(ミンボウ) :民衆の機嫌とりを利用する悪事。
⑥ 流行(リュウコウ) :巧みな弁舌を利用する悪事。
⑦ 威強(イキョウ) :威勢を利用する悪事。
⑧ 四方(シホウ) :四方の隣国を利用する悪事。
これらが八姦(悪事)です。
そのうち 「② 在旁(ザイボウ)」の説明のところで【唯唯諾諾】が登場します。
優笑侏儒、左右近習、此人主未命而唯唯、
優笑(役者)・侏儒(道化師)・左右近習、此れ人主未だ命ぜらるも唯唯たり、
役者や道化師、君主の身の回りの近習は、
主君が命令も出さないうちから、「はい、はい」と答え
未使而諾諾、
未だ使わざるも諾諾たり、
使役もしないうちから、「へい、へい」と従い、
先意承旨、観貌察色、以先主心者也、
意に先んじて旨(むね)を承け、貌(かたち)を観(み)、色を察して、
以て主の心に先立つ者なり。
主君の意向を先取りしてその意図をうけつぎ、主君の容貌を見てとって
その心を予測するものである。
この対策は
側近を実際に働かせて必ず言葉通りに行うことを求め、余計なことは言わせない。
これが「在旁」の対策です、と韓非は言ってます。