粗末で狭い様子を表わす言葉ですが、見識や学問の関係でその内容が狭くてあまり役に立たない、という意味にも使われます。福沢諭吉の『文明論之概略』の緒言にある四字熟語です。
【粗:ソ】は、米+且(音符号)から作られた形声文字で、精白していない米、転じて「あらい」に
用いる。意味は、①(原義)くろごめ。玄米。②(派生義)あらいです。
【鹵:ロ】は、象形文字で容器に盛った岩塩の形にかたどり、岩塩ひいて「しお」、塩分をふくんだ
荒れ地の意。意味は①(原義)しお。②(以下派生義)しおち。③やせち。④おろか。
【粗鹵:ソロ】は、雑でおろか、野暮(ヤボ)、というような意味と、粗末で役に立たないという意味でも
使われます。
【狹:キョウ】は、犬(せまいけもの道の意)+夾(音符号:キョウ)から作られた形声文字です。
意味は、①(原義)せまい。
【隘:アイ】は、阝(神梯はせまい険悪な地にある)+益(音符号)から作られた形声文字です。
意味は、①(原義)せまい。です。
【狭隘:キョウアイ】は、せまい、という同義の字を重ねて、強調しています。狭くて窮屈な意味を
表します。
今の学者はこの困難成る課業に当(あた)ると雖(いへ)ども、爰(ここ)に亦(また)偶然の
僥倖(ギョウコウ:)なきに非(あら)ず。
その次第を云えば、我国開港以来、世の学者は頻(しきり)に洋学に向い、その
研究する所、固(もと)より【粗鹵狭隘】なりと雖ども、西洋文明の一斑は彷彿(ホウフツ)
として窺(うかが)い得たるが如し。