【私が怨(うら)みを抱いている敵よ!退散するがよい】の意味で、敵対するものを、
折伏(シャクブク:悪人や悪法をくじき屈服)させるための祈願などで唱える言葉です。
仏教の言葉です。
『金色夜叉』中編第六章の最後に【怨敵退散】がでています。
人々の呆(あき)るるには目も掛けず、蒲田は証書を推戴(おしいただ)き推戴きて、
「さあ、遊佐君の為に万歳を唱へやう。奥さん、貴方(あなた)が音頭(オンド)を
お取んなさいましよ――いいえ、本当に」
小心なる遊佐はこの非常手段を極悪大罪と心安からず覚ゆるなれど、蒲田が一切を
引受けて見事に埒(ラチ)開けんといふに励されて、さては一生の【怨敵退散】の
賀(いはひ)と、各(おのおの)漫(そぞろ)に前(すす)む膝を聚(あつ)めて、長夜(チョウヤ)の
宴を催さんとぞ犇(ひしめ)いたる。